いくつものギャラリーがありアートの発信地として注目を集めてきたダウンタウン地区。ダウンタウンからじわじわとアーティストとしての実力を広めつつあるクリス・ゴトウのアトリエにお邪魔した。
クリスは鹿児島生まれの日本人。9歳のときに香港へ移住。高校の2年間はニュージーランドで生活し、19歳のときにハワイへ引っ越す。どうりでアメリカ人と間違えるほど英語が上手いはずだ。物心ついたときから漫画家になりたかったクリスは、高校時代に漫画家になるには才能がないと自ら感じるようになり、美術の先生に様々な技術を指導されたアートに広がりを見出し、アーティストとして活動を開始。ハワイに移住後は進学はせず、色々な仕事をしながらある時ダウンタウンにある有名なギャラリー、マークス・ガレージを訪問。アート募集の広告を見て出品したところ、なんと合格!2009年にマークス・ガレージにクリスの絵が展示されたのだ。
以来、マークス・ガレージのキュレターを勤めるリッチー氏の下で2年間インターンとして、アートイベントのプランニングやアーティストとの連絡係など、アートの世界を勉強することとなる。その間に培ったネットワークで、現在のダウンタウンのアパートを紹介してもらい単身引っ越し。ダウンタウンアーティストの一人として、Next Door、Manifestなどダウンタウンのカフェやバーなどを中心に個展を開くようになる。
クリスのアートは、独特なサーフアートがメイン。サーフィンが好きなクリスは遊び心でサーフアートを始めた所、このスタイルがポピュラーとなる。細かな波のラインやちょっとふくよかな女性の体を白黒のアウトラインにさりげなく色づけをする。高校生の頃は色の組み合わせが苦手でモノクロが中心だったというが、人間は本能的に色に惹かれると自分なりに考え、アーティストとしての視野が広がったそうだ。
赤ちゃんが飛んでいたり、指とからまっているような奇妙なアートも彼女が得意とするシリーズ。何とも表現するのが難しい独特なアートが特徴だ。そんな彼女も、オフの日はサーフィンやハイキングなどハワイの自然を思い切り楽しむアクティブ派。『毎日何かしている、だらだら生きていけない』と本人は笑って語ってくれた。
現在は、6月にカカアコで開催される個展に向けて『米とサーフ』というユニークなテーマを掲げ、精力的にアートを描いている。2013年はカカアコの壁画アートイベントPow Wow Hawaiiのアーティストに選抜され、今年はグリーンルームギャラリーでの取り扱いも決まり、まさに絶好調のクリス。まさにこれからが楽しみな若手アーティストの一人だ。